ヨーロッパでの宮脇方式の紹介について(2/3)世界経済フォーラムでの掲載

 ヨーロッパで注目を集めている宮脇方式の森づくり。2回目の今回は、世界経済フォーラム(World Economic Forum, WEF)のホームページに掲載された記事をご紹介します。気候変動の切り札となるかもしれないと高く評価しています。元の記事はこちらのリンクからどうぞ。

https://www.weforum.org/agenda/2020/07/tiny-urban-forests-miyawaki-biodiversity-carbon-capture

世界経済フォーラムHP内記事
2020年7月3日 アレックス・ソーントン

生物多様性を押し上げ気候変動と闘うため、小さな都市林が植えられている

  • 日本人の植物学者が1970年代に考案した方法により、小さなアーバン・フォレストをつくることが人気を集め、広がりを見せている。
  • テニスコートの広さ程度の場所でも、密植された森では生物多様性があふれている。
  • これは「宮脇方式」として知られており、林業用の植栽地にある木々よりも早く生長し、二酸化炭素をより多く吸収する。

 森をつくるのに、どのくらいの場所が必要だろうか?

 テニスコート数面以上が必要だと思った人には、もう一度考えてほしい。世界中の都市部にある小さい面積の土地に小さな森がどんどん生まれている。その多くは各地にある地元の団体によって植えられているが、採用しているのは日本の寺社に着想を得た方法なのだ。  やり方は至ってシンプルで、荒れた土地や使われなくなった場所に、その土地本来の木々を多種類植え、手を加えるのは最低限にして生長させる。この方法論を推進する者たちによると、地元の環境にぴったり合った複雑な生態系ができあがり、結果として生物多様性を改善し、早く生長し、二酸化炭素をより多く吸収する。

 

宮脇方式

 これは日本の植物学者、宮脇昭氏の方法論に基づいている。日本の寺社や墓地周囲にある開発から守られた場所には、非常に多種類の原生植生が共存しており、強く多様性に富んだ生態系が作り上げられていることに宮脇氏は気づいた。日本の景観を覆う、木材生産のために植えられた針葉樹林とは対照的だった。

 彼の研究は「宮脇方式」に発展した。土地本来の樹種で構成された森林が自然に生長できることを主眼とする方法論だ。宮脇方式でつくられた森はたった20年で成熟した生態系を作り上げることができる。森林が自力でゼロから再生しようとすると200年かかるので、そのスピードは一目瞭然だ。生物多様性のオアシスとなり、その土地でない木で構成された人工林と比べると、20倍に上る多様な種を支える場となる。

 さまざまな食物と住みかを提供するため、チョウやハチ、甲虫、カタツムリ、両生類などの動物がよく生育する。

世界中の都市空間を緑化する

 宮脇方式の森づくりは人気を集めていて、インド、アマゾン、ヨーロッパにはこれを先導する者たちがいる。ベルギーとフランスを本拠とする「アーバン・フォレスツ」とオランダの「タイニー・フォレスト」といった団体は、ボランティアを募って小さな面積の荒れ地を改善しようと試みている。

 都市林は、生物多様性に与える影響以上の多大な恩恵を地元のコミュニティに授ける可能性がある。緑の空間は人の精神的な健康状態を改善し、大気汚染がもたらす有害な影響を軽減し、さらには、一面に広がったコンクリートとアスファルトがもたらす異常な気温上昇、つまり都市部のヒートアイランド現象の解決策を提示するかもしれない。

二酸化炭素吸収源

 しかし、多くの環境問題の専門家にとって宮脇方式がとりわけ魅力的な選択肢に映るのは、気候変動と闘うための切り札となる可能性を秘めているからだ。地球の気温上昇を1.5℃押さえるためのカギとなる戦略のひとつに森林再生がある。ボン・チャレンジやトリリオン・トリーズ・ビジョン、世界経済フォーラムの1t.orgプロジェクトなどはこの先頭に立って積極的な目標を示している。

 新しい森や再生された森は、2050年までに10億トンに相当する二酸化炭素を取り除くことができると見積もられている。

 しかし、あらゆる森が炭素の固定に同じような効果を示すとは限らない。多くの森林再生事業で行われているような単一樹種による植林地よりも、土地本来の木で構成された成熟した森のほうがより多くの二酸化炭素を吸収する。土中の炭素のような、他の要素が果たす役割について科学者らが知見を得るに連れ、植える本数と同じくらい、正しい樹種を植えるのが重要であることがどんどん明らかになってきている。

 自然環境の保護団体は、宮脇方式でできた森が現存する原生林の保護に代わる策と見なしてはならないと強調する。不連続の小さな森は、広範囲にわたって広がる森に代わることは決してない。大きな森は多くの種の生存に必要不可欠だが、商業用の農地や焼き畑式農業のために伐採される危険に今もさらされている。けれども、もし地元のコミュニティに放置されたままの荒れ地があったら、そこに宮脇方式の森をつくることは、あなたにできる環境を手助けするひとつの方法かもしれない。

(訳・事務局)


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